ペタバイト単位のクラウドバックアップは現実的に可能か

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竜桜
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火災や水害、地震が起きてもデータは守りたい…

データの完全性を高めるために、自社から離れた場所にデータをバックアップしておきたいという需要はあるかと思います。
数テラバイトまでのデータであれば、多くのクラウドストレージ事業者が対応していますので今回は特に言及しません。

さて、今回考えるのはペタバイト単位の超大容量データのバックアップに関するものです。

(なお、1ペタバイト(PB)は1000/1024テラバイト(TB)です)

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ペタバイト単位のデータを日常的に出し入れするのは現実的に不可能

少なくとも、現代の技術においてはペタバイト単位のデータを日常的にインターネットへ送受信するようなことは不可能です。
回線コストが非現実的に高額となり1)少なくとも年間数億円~数十億円以上が用意できるなら技術的には可能です、現実的に対応できるものではありません。

例えば、10Gbpsの専用線を用意した場合、1PB(ペタバイト)のデータを休みなく伝送しても10日間はかかります。

長期間手をつけずにデータを保存することが前提

このような大容量のデータに関しては、基本的には長期間データをせずに保管しておく運用が前提となります。
いわゆるコールドストレージとしての運用ということになります。日常的にデータを取り出さず、しかし必要なときにデータを取り出し、回復できるようにする保険に近いものです。

長期間のデータ保管を前提とするサービスを利用する

Amazon Web Services(AWS)のサービスの1つとして存在するAmazon S3 Glacier Deep Archive2)https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/new-amazon-s3-storage-class-glacier-deep-archive/は、超大容量のデータを長期間にわたって保管することを前提としています。

Amazon S3 Glacier Deep Archiveの特徴と制約

竜桜
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端的に言えば、保管コストは安価なものの、取り出しにはそれなりに料金がかかります。

Amazon S3と呼ばれるストレージサービスが存在しますが、Glacierはそれをよりデータを安価に、長期的に保管できる目的で提供されているサービスとなります。
Glacierよりもさらに安価に、なおかつ長期的なデータ保管を前提としたサービスがGlacier Deep Archiveです。

Glacier Deep Archiveは保管料金が非常に格安3)https://aws.amazon.com/s3/pricing/に設定されており、また180日間分の最低利用期間が設定されています4)180日以内にオブジェクトを削除したり上書きしたりした場合、残存期間分の料金が違約金として請求されます
取り出し料金はAmazon S3内では最もコストがかかり、またデータをすぐに取り出すこともできません5)復元には数時間かかります。また、通常のGlacierとは異なり特急料金を支払ってすぐに取り出す迅速取り出しも使用できません

S3 Glacier Deep Archiveを使用した場合の料金試算

Amazon S3 Glacier Deep Archiveを利用した場合の料金試算は次の通りです。

前提

次の前提条件を設定します。料金は2019年7月20日時点のもので、変更されることがあります。

竜桜
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AWS Snowball 80TBモデルの実容量が72TBであることを失念しておりました。お詫びして訂正いたします。

以下の記載に関しても修正を行っています。

リクエスト料金は複雑なため、料金計算に含みません。細かいファイルが多い場合、まとめずに送受信すると料金が跳ね上がります。
為替レートは、本日のレートである1ドル107円72銭と設定します。
消費税は10%と設定します。
リージョンはアジアパシフィック(東京)とします。
取り出し料金にはデータ転送料金、復元料金を含めます。
Snowball(後述)は、1ペタバイトあたり80TBモデル15台が必要であるとして計算します。

竜桜
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以下には料金計算の算定根拠を記載しています。実際の料金計算モデルを確認したい場合は読み飛ばしてください。

料金は次の値を設定します。
Amazon S3 Glacier Deep Archive保管料金: 0.002USD/GB
低冗長化ストレージ: 1TB/月まで0.0264USD/GB。
1TB/月を超え49TB/月まで0.0259USD/GB。
50TB/月を超え500TB/月まで0.0255USD/GB。
500TB/月を超え1000TB/月まで0.025USD/GB。
1000TB/月を超え5000TB/月まで0.0246USD/GB。
5000TB/月を超える分について0.0242USD/GB。
データ転送料金: 上り転送は無料。
下り転送は1GB/月まで無料、以降10TBまで0.114USD/GB。
10TBを超え50TB以下は0.089USD/GB。
50TBを超え150TB以下は0.086USD/GB。
150TBを超える場合は0.084USD/GB。
復元したデータは1か月ですべてダウンロードしたとみなします。
復元料金には大容量取り出し 0.005USD/GB を適用します。
Snowballは、80TBモデル1台あたり250USDとします。
Snowballを使用したデータ取り出しは、0.04USD/GBとします。

1TB=1024GB、1PB=1024TB=1048576GBとします。

計算

保管と取り出し、それぞれに料金がかかります。

保管料金

1ペタバイトのデータを保管する場合、かかる保管コストは次の通りです。
0.002USD/GB * 1048576GB * 1.1 = 2306.8672USD (約24万8496円)
保管のみであれば、概ね1か月25万円程度で1ペタバイトのデータをクラウドストレージに保管することが可能です。

なお、インターネット経由でデータを預け入れる場合のデータ転送料金は無料です。

竜桜
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注意しなければならないのは、取り出しコストです。

Amazon S3に限らずAWSは基本的に従量制での課金となるため、取り出しにも料金がかかります。

取り出しコスト

Amazon S3 Glacier Deep Archiveからデータを取り出すには、一度データを復元する必要があります。

復元したデータはAmazon S3の低冗長化ストレージに一時的に保存されます。
低冗長化ストレージに保存する場合、次のコストがかかります。

0.0264USD/GB * 1024 * 1.1 = 29.73696USD/TB(テラバイト) (約3203円/TB/月)

この料金は時間単位で按分され、月間平均保管量に応じて料金階層も変化するため、ここでは最も利用量の少ない階層で計算し、テラバイト単位としています。

復元にかかるコストは次の通りです。1ペタバイトのデータを復元する場合、次のようになります。

0.005USD/GB * 1048576GB * 1.1 = 5767.168USD (約62万1194円)

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データを復元しても、それはまだAmazonのデータセンター内にすぐに取り出せる状態で置かれたにすぎません。この後、手元にデータを取り寄せる必要があります。

取り寄せにかかる料金は、次の通りです。

インターネット経由で1ペタバイトのデータを取り寄せる場合、次のようになります。

( 0.114USD/GB * 10239GB + 0.089USD/GB * 40960GB + 0.086USD/GB * 102400GB + 0.084USD/GB * 894976GB ) * 1.1 = 97676.777USD (約1052万1254円)

しかし、インターネットを使用したデータ転送には先述の通り非常に長い時間がかかります。
そのような場合、インターネット回線を使用せずにデータをAWSと送受信する方法があります。

竜桜
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ハードディスクを直接輸送したほうが手っ取り早いのでは?

そのような考えで設計されているサービスがAWS Snowballです。
AWSから専用のハードディスクが貸し出され宅配便で輸送されますので、それにデータを詰めたり、逆に詰められて送られてきたりすることでインターネット回線を使わずにデータを送受信できます。
1回申し込むと、集荷と配送の日を除いて10日間までレンタルが可能です。11日以上借りると延滞料金が発生する点に注意してください。

Snowballは、1台の機器に72TBまでのデータを格納できます。従って、1PBのデータを送受信するには15台のSnowballが必要です。
Snowball自体の料金は次の通りです。

250USD/台 * 15台 * 1.1 = 4125USD (約44万4345円)

Snowballを使用してデータを入れる場合は、Snowballの料金だけで済みます。
取り出す場合は、次の料金がかかります。1ペタバイト取り出す場合の料金は次の通りです。

0.04USD/GB * 1048576GB * 1.1 = ‭46137.344USD (約496万9684円)‬

Snowballのレンタル料金を考慮しても約600万円で済み、1000万円以上を要するインターネット経由でのデータ転送よりも非常に安くなります。

竜桜
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非常に大容量のデータを取り出す場合は、AWS Snowballを利用するとデータ転送料金を大きく軽減できます。

料金の概算まとめ

上記の料金計算をまとめて概算した場合、次のような見積もりとなります。

データ保管: 約25万円/PB/月
データ搬入: インターネット経由であれば無料、Snowball使用の場合は約45万円/PB
データ搬出: インターネット経由であれば約1200万円/PB、Snowball使用の場合は約600万円/PB

クラウドバックアップは現実的なのか?

料金だけ見れば、クラウドバックアップは現実的に不可能ではありません。
個人では難しいかもしれませんが、法人ユースであれば料金面だけ見れば射程圏内です。
ですが、法人ユースの場合次のような事情によりクラウドバックアップができないケースがあります。

AWSを扱えるような技術者がいない

竜桜
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AWSは従量制のクラウドサービスであるため、料金の見積もりや扱いを誤ると高額請求につながる恐れがあります。

AWSに関して十分な知識を持つIT技術者がおらず、このようなソリューションが扱えないケースがあります。
従量制クラウドサービスである以上、使用量を管理できていなかったり、今回のS3であればストレージクラスを誤って設定していたりすると高額請求につながる危険性もあります。

バックアップは普段は使われることはありませんし、使われるような時が来ることは望むようなことではありませんので、IT技術者を養成しようと一般の法人では思いつかないかと思われます。

セキュリティ上の理由によりオンプレミス環境以外にデータを置けない

竜桜
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データの機密性を維持するため、他の私企業が管理するサーバーにバックアップデータを置くことができない場合があります。

セキュリティ上の理由から、データを外部の私企業が管理するサーバーに置くことができないケースがあります。
そのような目的では、こうしたクラウドバックアップを使用することはできません。

バックアップデータが同一の建屋内にあるというケースもよくありますが、そのような体制では自然災害等には無力です。

でも遠隔地へのバックアップは大切

クラウドバックアップを使用できないとしても、遠隔地へのバックアップは事業継続計画(BCP)上重要なものになります。
例えば地理的に離れた複数の支店を持つ場合、定期的にバックアップメディアを別の支店に輸送するのも有効な方法です。

竜桜
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一度失われたデータの回復は困難なため、失われて後悔する前にバックアップ体制を見直すことは個人法人を問わず重要です。

References   [ + ]

1. 少なくとも年間数億円~数十億円以上が用意できるなら技術的には可能です
2. https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/new-amazon-s3-storage-class-glacier-deep-archive/
3. https://aws.amazon.com/s3/pricing/
4. 180日以内にオブジェクトを削除したり上書きしたりした場合、残存期間分の料金が違約金として請求されます
5. 復元には数時間かかります。また、通常のGlacierとは異なり特急料金を支払ってすぐに取り出す迅速取り出しも使用できません
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